満員電車にご用心
2011/11/30
◆電子書籍『満員電車にご用心』(シュガーLOVE文庫)◆
樹里が満員電車で痴漢と間違えたのは、ちょっとかっこいい探偵・武部。痴漢探しの依頼を受けているという武部に、樹里は押しかけ助手として協力を申し出るが――。
――あーもう、サイアク。
すし詰めの満員電車の中、北村樹里は、吊革にしがみつきながら溜息をついた。
大学の講義のあと、教授からプリントの印刷を頼まれて遅くなり、帰宅ラッシュにぶつかってしまった。
駅に着くたびに人が増え、前後左右から押されて、身動きする余裕もない。
――こんなことなら、どこかで食事でもして、時間をずらせばよかった。
まとめずに垂らしたロングヘアが、顔や首筋に張りついてきてうっとうしい。片手を上げて栗色の巻き毛をかきあげるが、きりがないので諦め、目を閉じて不快感に耐える。
電車が大きく揺れ、だれかの体が強く押しつけられた。樹里の腰のあたりにあった手が、もがくように動き、かえってバランスを崩したのか、さらに密着してくる。
変だな、と思ったときには、その手は明確な意図をもって樹里の腰の上を滑り、服の上からさわさわとヒップを撫でまわしてきた。
――ええっ!?
驚いて目を開けると、少し離れたところに立つ男性と目が合った。
年の頃は二十代後半。前髪を長めにしたショートヘアに、くっきりした目鼻立ちの、ちょっとモデルっぽいイイ男だ。
青年は、なにかに気づいたように目を見開くと、樹里の顔をまじまじと見つめてきた。
と、ヒップを探っていた手が急に大胆になり、今度は前に移動してくる。
「ちょ……! やだ、痴漢っ!?」
ぞっとして樹里は思わず声を上げた。
青年がはじかれたように顔色を変え、人込みを掻き分けて、こちらへ向かってこようとする。
「バカ、こっち来ないで! 触らないでよ、いやーっっ!」
樹里は、さしのべられた手を無我夢中で振り払うと、渾身の力を込めて青年の股間を蹴り上げた。
「うぐ……っ!」
青年はひきつった顔で一瞬硬直し、すぐにその場にしゃがみこむ。
「ま、待て……俺は違う……痴漢はそいつだ……っ!」
脂汗を流しながら青年が指さすと、樹里を突き飛ばすようにして、別の男性が勢いよく走りだした。
「えっ、なになに?」
「痴漢だって」
「えー、マジー?」
周囲の人々が、状況を呑みこみきれずにざわめくなか、ようやく車掌が駆けつけてきた。
「だから、俺は痴漢じゃないって!」
駅構内の詰め所のような部屋に連れていかれると、樹里に蹴られた青年は、吠えるように身の潔白を主張した。
「だ、だって、あたしのことじろじろ見て、急に飛びかかってきたじゃない!」
「それは、あんたの様子が変だったから、痴漢だと思って助けに行こうと――」
「なんでそれだけで痴漢だってわかるのよ! やっぱりあなたが痴漢なんでしょ!」
「違うって! 俺は探偵で、依頼を受けて痴漢を捜してたの! おかげで痴漢は取り逃がすし、こっちこそ被害者だ!」
「えっ、探偵?」
聞き慣れない単語に樹里が反応すると、青年は思い出したように名刺を取り出した。
《武部探偵事務所 代表・武部亨》
名刺を受け取った警察官が、すかさず電話をかけて身元を確認する。
「だいたいあの距離で、どうやってあんたに手が届くんだよ! 俺があんたに近づいたのは、あんたが痴漢に触られてからだろう!?」
「あっ……言われてみれば」
指摘されてはじめて樹里は、その矛盾に気づいた。
◆ ◆ ◆
※電子書籍『満員電車にご用心』(シュガーLOVE文庫)の冒頭部分でした。
※以下、Hシーンも少し抜粋。
◆ ◆ ◆
片手で顎をつかまれ、さらに深くキスをされた。舌先を甘噛みされると、じんとしたしびれが走り、頭がぼうっとなった。
一瞬、ここが道のすぐ脇だということを思い出したが、すぐにどうでもよくなった。だれかに見られることより、途中でやめられることのほうが怖かった。
顎をつかんでいた手が、首筋をたどって下へと移動し、胸に触れたかと思うと、ぎゅっとわしづかみにしてくる。痛いと思ったのは最初だけで、すぐ快感に変わる。うずきに似た心地よさが波紋のように広がり、股間の一点が熱くなる。
衣服の布地ごしの刺激なのが、もどかしい。
唇が離れ、耳たぶにキスをされた。軽く歯を立てられて、ぞくっとする。舌先で外周をなぞられ、続いて内側も舐められる。
ぴちゃぴちゃと、卑猥な音が響いた。
恥ずかしさが引き金になって、全身がかっと熱くなる。そのせいで感度が上がったのか、同じはずの刺激が、急に強くなったように感じられた。
とがらせた舌先を耳の穴に入れられると、悪寒のような震えが走り、下半身の力が抜けた。濡れた耳に武部の息がかかり、冷たくてくすぐったい。それさえも愛撫になり、体がもっと熱くなる。
まるでそれ自体独立した生き物のように、淫らにうごめく舌。濡れた音。熱い舌の感触と、唾液が蒸発する冷たさのギャップ。
舐められて噛まれるたびに、どんどん敏感になり、耳だけでイってしまいそうだ。
燃えるように下腹部が熱い。無意識に腰を前へ押し出すと、強く胸をもまれ、思わず声が漏れた。
「あ……っん」
自分でも恥ずかしくなるような甘い声。
だが、欲望のほうが羞恥心に勝り、とうとう口に出して言ってしまう。
「お願い……もっと……」
親指で乳房の中心をこすられると、電流のようなしびれが走った。ブラの下で、自分の乳首が痛いほど勃っているのがわかった。そこを指で挟まれ、ほぐすようにもみこまれる。
まるで乳首がスイッチだったように、クリトリスがどくんと脈打った。続いて、熱い蜜が、とろりと奥から流れ出てくるのを感じる。
――あっ……ショーツが濡れちゃう。
濡れた布地が頭に浮かんで、かっと顔がほてる。
両手を頭上で固定され、両足を大きく開かされた自分の姿を想像し、ほとんど恐怖に近い快感に襲われる。
――こんなふうにされて気持ちいいなんて……あたし、変になっちゃったみたい……!
すし詰めの満員電車の中、北村樹里は、吊革にしがみつきながら溜息をついた。
大学の講義のあと、教授からプリントの印刷を頼まれて遅くなり、帰宅ラッシュにぶつかってしまった。
駅に着くたびに人が増え、前後左右から押されて、身動きする余裕もない。
――こんなことなら、どこかで食事でもして、時間をずらせばよかった。
まとめずに垂らしたロングヘアが、顔や首筋に張りついてきてうっとうしい。片手を上げて栗色の巻き毛をかきあげるが、きりがないので諦め、目を閉じて不快感に耐える。
電車が大きく揺れ、だれかの体が強く押しつけられた。樹里の腰のあたりにあった手が、もがくように動き、かえってバランスを崩したのか、さらに密着してくる。
変だな、と思ったときには、その手は明確な意図をもって樹里の腰の上を滑り、服の上からさわさわとヒップを撫でまわしてきた。
――ええっ!?
驚いて目を開けると、少し離れたところに立つ男性と目が合った。
年の頃は二十代後半。前髪を長めにしたショートヘアに、くっきりした目鼻立ちの、ちょっとモデルっぽいイイ男だ。
青年は、なにかに気づいたように目を見開くと、樹里の顔をまじまじと見つめてきた。
と、ヒップを探っていた手が急に大胆になり、今度は前に移動してくる。
「ちょ……! やだ、痴漢っ!?」
ぞっとして樹里は思わず声を上げた。
青年がはじかれたように顔色を変え、人込みを掻き分けて、こちらへ向かってこようとする。
「バカ、こっち来ないで! 触らないでよ、いやーっっ!」
樹里は、さしのべられた手を無我夢中で振り払うと、渾身の力を込めて青年の股間を蹴り上げた。
「うぐ……っ!」
青年はひきつった顔で一瞬硬直し、すぐにその場にしゃがみこむ。
「ま、待て……俺は違う……痴漢はそいつだ……っ!」
脂汗を流しながら青年が指さすと、樹里を突き飛ばすようにして、別の男性が勢いよく走りだした。
「えっ、なになに?」
「痴漢だって」
「えー、マジー?」
周囲の人々が、状況を呑みこみきれずにざわめくなか、ようやく車掌が駆けつけてきた。
「だから、俺は痴漢じゃないって!」
駅構内の詰め所のような部屋に連れていかれると、樹里に蹴られた青年は、吠えるように身の潔白を主張した。
「だ、だって、あたしのことじろじろ見て、急に飛びかかってきたじゃない!」
「それは、あんたの様子が変だったから、痴漢だと思って助けに行こうと――」
「なんでそれだけで痴漢だってわかるのよ! やっぱりあなたが痴漢なんでしょ!」
「違うって! 俺は探偵で、依頼を受けて痴漢を捜してたの! おかげで痴漢は取り逃がすし、こっちこそ被害者だ!」
「えっ、探偵?」
聞き慣れない単語に樹里が反応すると、青年は思い出したように名刺を取り出した。
《武部探偵事務所 代表・武部亨》
名刺を受け取った警察官が、すかさず電話をかけて身元を確認する。
「だいたいあの距離で、どうやってあんたに手が届くんだよ! 俺があんたに近づいたのは、あんたが痴漢に触られてからだろう!?」
「あっ……言われてみれば」
指摘されてはじめて樹里は、その矛盾に気づいた。
◆ ◆ ◆
※電子書籍『満員電車にご用心』(シュガーLOVE文庫)の冒頭部分でした。
※以下、Hシーンも少し抜粋。
◆ ◆ ◆
片手で顎をつかまれ、さらに深くキスをされた。舌先を甘噛みされると、じんとしたしびれが走り、頭がぼうっとなった。
一瞬、ここが道のすぐ脇だということを思い出したが、すぐにどうでもよくなった。だれかに見られることより、途中でやめられることのほうが怖かった。
顎をつかんでいた手が、首筋をたどって下へと移動し、胸に触れたかと思うと、ぎゅっとわしづかみにしてくる。痛いと思ったのは最初だけで、すぐ快感に変わる。うずきに似た心地よさが波紋のように広がり、股間の一点が熱くなる。
衣服の布地ごしの刺激なのが、もどかしい。
唇が離れ、耳たぶにキスをされた。軽く歯を立てられて、ぞくっとする。舌先で外周をなぞられ、続いて内側も舐められる。
ぴちゃぴちゃと、卑猥な音が響いた。
恥ずかしさが引き金になって、全身がかっと熱くなる。そのせいで感度が上がったのか、同じはずの刺激が、急に強くなったように感じられた。
とがらせた舌先を耳の穴に入れられると、悪寒のような震えが走り、下半身の力が抜けた。濡れた耳に武部の息がかかり、冷たくてくすぐったい。それさえも愛撫になり、体がもっと熱くなる。
まるでそれ自体独立した生き物のように、淫らにうごめく舌。濡れた音。熱い舌の感触と、唾液が蒸発する冷たさのギャップ。
舐められて噛まれるたびに、どんどん敏感になり、耳だけでイってしまいそうだ。
燃えるように下腹部が熱い。無意識に腰を前へ押し出すと、強く胸をもまれ、思わず声が漏れた。
「あ……っん」
自分でも恥ずかしくなるような甘い声。
だが、欲望のほうが羞恥心に勝り、とうとう口に出して言ってしまう。
「お願い……もっと……」
親指で乳房の中心をこすられると、電流のようなしびれが走った。ブラの下で、自分の乳首が痛いほど勃っているのがわかった。そこを指で挟まれ、ほぐすようにもみこまれる。
まるで乳首がスイッチだったように、クリトリスがどくんと脈打った。続いて、熱い蜜が、とろりと奥から流れ出てくるのを感じる。
――あっ……ショーツが濡れちゃう。
濡れた布地が頭に浮かんで、かっと顔がほてる。
両手を頭上で固定され、両足を大きく開かされた自分の姿を想像し、ほとんど恐怖に近い快感に襲われる。
――こんなふうにされて気持ちいいなんて……あたし、変になっちゃったみたい……!
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