フラチなLOVERS
2013/09/25
◆電子書籍『フラチなLOVERS』(メディアチューンズ・月夜見ライブラリー)◆
サスペンスからホラー、SFまで……ミステリアスでHな不思議系ティーンズラブ短編集が、電子書籍としてついに復刊!
単行本の5編「運命のダーリン」「カレな彼女とカノジョな彼」「百鬼夜行」「カレイドスコープ」「淫魔降臨」に加え、電子版特典として書き下ろし「リセット迷宮」を収録。
恋もHも、ハラハラドキドキもいっぱいな1冊をどうぞ☆
◆「運命のダーリン」より
占いマニアの真弥は、尊敬する占い師、ルナール・大塚の占いどおりに健一という青年と出会い、つきあいはじめるが――。
【抜粋】
「あなたは今、三年に一度の大幸運期にあります」
マンションの部屋の奥に設けられた天幕の中、真弥は緊張して椅子に腰かけていた。
初めて対面したルナール・大塚は、三十歳過ぎの男性で、物腰の上品なインテリふうのハンサムだった。
占いは、西洋占星術とタロットを組みあわせて行なわれる。
ルナール・大塚は、中央に開かれた《恋人》のカードを示して言った。
「とくに恋愛運が好調のようです。近いうちに、運命の恋人に出会えるという暗示が出ていますよ」
彼の視線が、舐めるように真弥の上を這いまわる。なにもかも見透かされているような気がして、真弥は無意識に体を縮めた。
「……運命の恋人?」
「そう、運命の恋人です。思いがけない出来事をきっかけに、あなたたちは出会うでしょう。相手があなたにひと目惚れします。交際の申しこみは積極的に受けて吉。彼はあなたの運命の恋人なのですから」
憧れの占い師に占ってもらえた感動と緊張とで、真弥はぼうっとなって家路についた。
ぼんやりしたまま赤信号の横断歩道に足を踏みだし、けたたましいクラクションにはっと我に返る。
一台のトラックが目の前に迫っていた。
足がすくんで動けない。
ひかれる!
そう思ったそのとき、横合いから伸びてきた手につかまれ、強い力で歩道まで引きもどされた。
「おい! なにやってるんだ!」
真弥の腕をつかんだ青年が、叱るように怒鳴りつけた。
骨格のはっきりした男らしい顔立ち。スーツに包まれたたくましい体。
野性味あふれるその顔が、真弥の顔を見たとたん表情を失ったかと思うと、みるみる赤くなった。
「……だ、大丈夫か?」
【Hシーン抜粋】
痛みを感じるほどの激しい抱擁に、息もつけない。だがそれはたしかに快感として体に刻みこまれ、着実に真弥を高ぶらせていく。
荒い息に耳朶をくすぐられて、ぶるっと身震いする。乳首を挟まれた痛みがしびれに変わり、甘い熱となって全身に広がる。
抱きあっているだけで下腹部が熱くなり、溶けた蜜が最奥からこぼれだした。
蜜は太もものあいだに流れ、絡みあった健一の足まで濡らして、卑猥な音を立てる。
先走りの露をにじませた健一のものが、真弥の臍のあたりに触れ、水分の蒸発にともなう冷たい軌跡を残して通りすぎていく。
こすりつけられる健一そのものは、その冷たさに反比例してひどく熱く、狂暴なまでの強さで真弥の体を押しかえす。
だが、健一の野性的な顔のなか、二つの目だけは穏やかな愛情に満ちていて、真弥は恐れを感じなかった。
骨がきしむほど抱きしめられ、むさぼるように全身を攻められるが、そのすべてが深い快感となって体の奥に沈んでいく。
直接触れられる前から、真弥の股間は花開き、蜜をまきちらしながら、健一を誘うようにうごめいた。
心臓がばくばくと躍り、頭の中が真っ白になる。
両足を抱えあげられたかと思うと、健一の太く硬いものが一気に突きたてられた。
痛みはない。
充分すぎるほど熟れきっていた互いのそこは、まるであつらえたようにぴったり収まり、二人は安堵のこもった喘ぎを漏らす。
真弥は自分からも足を絡め、両腕で健一にしがみつきながら、汗に濡れた首すじに顔を押しつけ、その肌をそっと噛んだ。
それを合図にしたかのように、健一がゆっくり動きはじめる。
浅いところで出し入れされて、真弥はもどかしさに身をよじった。
【Hシーン抜粋】
弘樹の愛撫は、技巧的で、念入りで、真弥があまりその気でないときでも、必ず真弥を絶頂に導いた。
「ねえ、目隠ししてみない?」
毎度毎度、弘樹は演出にもこだわる。
視界がさえぎられると、急に不安になり、それが体を敏感にさせて、かえって真弥は弘樹の愛撫に感じてしまった。
素肌にマッサージオイルを垂らされ、淫靡な手つきで全身を撫でまわされる。
胸から脇、腋の下から肘、手首をたどって、指のあいだまでも。ぬるぬるしたその感触は、まるでなにかの触手に撫でられているようで、快感と嫌悪感が同時に噴きだしてくる。
見えないので、いつどこを触られるかわからない。
乳首をこねられたかと思うと、次には股間の茂みをかきまわされ、予想できない快感に体がびくびくひきつってしまう。
「正直に声に出してごらん? そのほうがもっと気持ちよくなれるよ?」
言われるまま、真弥は恐るおそる声を上げてみる。
「いいよ、ステキな声だ。僕まで感じてしまう。もっと聞かせて」
真弥は恥ずかしさとうれしさで真っ赤になった。
運命の恋人に喜んでもらいたくて、実際に感じている以上によがってみせる。
「自分で足を広げて、自分であそこをいじってみせて」
そんな破廉恥な要求にも応えてしまう自分に驚きながら、彼が運命の恋人だからこんな真似ができるのだと、妙に納得してしまう。
◆「カレな彼女とカノジョな彼」より
一見男にしか見えない正樹は、失恋の痛手を癒すために参加したツアーで、絶世の美女・学といっしょになる。ところが学は、じつは女装マニアの男。学に言いよられて正樹がドキドキしているところに、こんどは学が何者かに命を狙われはじめ――。
【抜粋】
窓の外を、真っ青な空と緑の木々が、パノラマのように流れていく。
バスの車窓に頬杖をついてその景色を眺めながら、奥井正樹は大きく溜息をついた。
『なんだよ、おまえ。俺が、おまえのこと恋愛の対象にできると思うわけ?』
一週間前に聞いた、親友の橋本和也の冷淡な声が、今も耳について離れない。
『おまえはいいヤツだと思うけどさ、俺、おまえのこと、男友だちとしてしか見れないんだよね』
何年も好きだった相手に、意を決して告白し、玉砕した瞬間。
――まあ、予想はしてたんだけどね。
正樹はもういちど溜息を漏らし、窓ガラスに映った自分の顔を見つめた。
鼻筋の通ったきりりとした顔立ち。やさしさと男らしさが同居して、いかにも女の子にモテそうだ。
体格にも恵まれ、小学生時代に百六十センチ代を記録した身長は、大学生の現在、ジャスト百八十センチ。
バレンタインデーには欠かさずチョコレートをもらい、今も、いっしょに乗りあわせたバスの女性客たちから、ちらちらと熱い視線を向けられている。
――これが、ホントに見た目どおりの性別だったら、何も問題はないんだけどさ。
そう。どこからどう見ても、自分の目からも男にしか見えないが、正樹はれっきとした女なのだ。
だが、正樹という、一般的には男性的な名前も災いし、初対面の人はまず、正樹を男だと思いこんで疑わない。女だと知ってからも、男に対するのと同じ態度で接するのがふつうだ。
――あーあ、あんな美女に生まれたかったなんてゼイタクは言わないから、せめてちゃんと女に見える外見が欲しかったよ。
通路を挟んだ向こう側の座席で、同じように外を眺めている女性客を見て思う。
同性の目から見てもどきどきするような美人だった。正樹とは逆に、男性客の視線を一身に集めている。
腰のあたりまであるつややかなロングヘア。目鼻立ちのくっきりした顔にはばっちりフルメイクをし、Tシャツとデニムのロングスカートに包まれた体は、長身だがほっそりとひきしまって、じつに女らしい。
【Hシーン抜粋】
「隠さないでちゃんと見せてよ。あたし、正樹の体って好き。とってもきれいなんだもん」
「……きれい……?」
正樹が恐る恐る顔を上げると、学の真剣なまなざしにぶつかった。
「きれいよ。しなやかで力強くて、すごく魅力的。あたし、正樹みたいなタイプがいちばん好みなの」
夢のような言葉を囁かれ、正樹は抵抗を忘れてしまった。
促されるまま布団に横たわり、黙って学の極上の愛撫を受ける。
学は、昼間のナチュラルメイクではなく、うってかわってあでやかなメイクをしている。その下は、ほっそりしているが、紛れもなく若い男の体で、そのギャップがかえって扇情的だ。
学の唇が這いまわったあとに、ルージュの赤い色が残る。まるでその色自体が熱を持っているように、そこを中心に体が熱くほてっていく。
学の舌で、指で、正樹は一方的になんどもイかされた。
【Hシーン抜粋】
首すじにキスをされ、バスローブの上から乳首をつねられて、正樹はびくっと体を震わせた。
刺激されたところがじんじんして、またたくまに股間が熱くなる。
首すじを舐められたり噛まれたりしながら、両手で胸をじっくりほぐされた。
小ぶりの乳房を手のひらで包まれ、はじめは弱く、しだいに強くもみこまれる。そのあいだに親指の腹で乳首をこねられ、二本の指でつままれて、押しつぶすように引きのばされる。
「あ……」
我知らず、甘い吐息が漏れた。
うっとりする心地よさのなかに、いてもたってもいられない焦燥感が生まれ、たまらなくなって学の背中を抱きしめる。
ほとんど体格の変わらない学の上半身は、ほっそりしていてもやはり男のものだ。しなやかな筋肉にみっしり覆われ、力強く正樹の指を押しかえしてくる。
両足を割られ、あいだに学の腰が入りこんできた。学が緩く腰を回すと、立ちあがりかけたペニスが内ももにあたり、ビロードのようになめらかな皮膚で、正樹の敏感なところを摩擦してきた。
足を絡め、自分の腰を前に出して強く押しつける。
ペニスの先にクリトリスをこすられ、正樹は思わず呻き声を上げた。
快感が強すぎて、苦痛を覚えるほどだ。
陰唇を割りひらかれ、裏側のデリケートな皮膚を撫でられる。膣口の上にもぐにぐにと押しつけられたが、それ以上入ってこようとはしない。
期待とじれったさとで、目の奥が熱くなった。
「どう? 気持ちいい?」
「うん……いい……すごく」
恥ずかしくなるような問いに、すなおに答えてしまう。
クリトリスと膣口のあいだ、尿道口の上をこすられると、とろけそうな気持ちよさで全身の力が抜けた。
◆「百鬼夜行」より
食人鬼による連続殺人事件の捜査のため、怪奇Gメンの非常勤捜査官・希は、所轄署の刑事・光晴とコンビを組んだ。食人鬼の存在を否定し、ただの学生にしか見えない希をあからさまに馬鹿にする光晴に、希は好意を覚える。そのあいだにも、連続殺人の被害者は増え――。
【抜粋】
「おいおい、冗談じゃないぜ。こいつが、派遣されてきた特別捜査官だって?」
あからさまな侮蔑の言葉に、川端希はふっと笑みをにじませ、挑発するように若い刑事を見返した。
軽く見られるのはいつものことだ。外見的には希は、小柄で華奢な少女にしか見えない。そんな人間が捜査官を名乗って現れても、疑うか呆れるかするのがふつうだろう。
「いや、冗談などではない。こちらが、《怪奇Gメン》随一の腕利き捜査官、川端希さんだ」
上司である大野警部がもったいぶって紹介すると、刑事はますます嫌悪感をあらわにして言った。
「《怪奇Gメン》ね。幽霊? モンスター? そんなものが実在するとでも? 政府は税金を無駄遣いしてるとしか思えませんね」
この世には、科学や常識でははかれない物事が無数にある。そのなかでも、とくに凶悪な刑事事件だけを扱うために設置された秘密警察が、通称《怪奇Gメン》だ。
希は一介の学生にすぎなかったが、その特殊な能力を買われ、《怪奇Gメン》の非常勤捜査官として活躍していた。
「腕利きだかなんだかしらないが、とにかく俺は、こいつとなんか組む気ないですから。だれかほかの奴をあたってください」
「君でなけりゃならんのだよ。捜査の指揮をとっていた宮内刑事部長は、交通事故で入院。この事件の担当で、ほかに体力のありあまっている人間といったら、君しかおらん」
「嫌です」
刑事はそっぽを向いたが、大野警部はかまわず先を続けた。
「まあ、こんなひねくれ者ですがね、刑事としてはかなりまともな部類です。紹介しますよ、川端捜査官。早川光晴刑事です」
【Hシーン抜粋】
愛撫されることに慣れていない体は、希の動きに、いちいち敏感に反応した。
触れただけでぴくりと震え、たちまち股間が硬くなる。感じているのを隠そうとするあまり、かえって息が荒くなり、全身がひきつりはじめる。
「乳首、感じるんだ」
「感じてない! ――うっ」
ぺろりと舐めると、光晴は目をむいて体を硬直させた。
申し訳程度の小さな乳首を口に含み、舌先でしばらくもてあそぶと、ぷくりと硬くなってくる。
歯のあいだに軽く挟むと、切ない吐息が漏れ、立ちあがったペニスが希の下腹部にあたった。
そのなめらかな感触に、希の股間がぞくりとしてうずく。
口で乳首を攻めながら、光晴の両腕に指をすべらせ、脇腹から腹部にかけてゆっくり撫でおろした。続いて唇を下の方へ這わせ、下腹部の豊かな茂みに顔をうずめる。
「……ッ!」
ペニスの先端を口に含むと、光晴の膝が跳ねあがった。
手が伸びてきて、髪をわしづかみにされる。
「よせ……ちょっと待て……!」
制止の声を無視して、先端のくびれをなぞり、鈴口に舌先をさしこむ。
もがく光晴の動きを適当にあしらいながら、根もとまでくわえこみ、唇に力を入れて一気にしごきあげると、悲鳴のような喘ぎ声とともに、熱いしぶきが口の中にぶちまけられた。
残さず飲みくだし、唇を舐めながら相手の顔を覗きこむ。
「――くそったれめ」
光晴は固く目をつぶり、肩で息をしながら罵った。
【Hシーン抜粋】
光晴は希の足を広げ、腰を持ちあげて、自分の顔の前にくるようにした。
足の付け根に細かいキスを降らせ、下腹部の草むらの縁を舌でなぞる。
くすぐったいような気持ちよさに、希は体をよじり、続きをせがんで腰を突きだした。
草むらを舌でかきわけられ、割れ目にそってくりかえし舐められる。クリトリスをかすめられると、電撃のような衝撃を感じて、びくっと体が跳ねた。
「あっ……やだ」
クリトリスを口に含まれ、舌先で転がすようにこねられる。その強烈な感覚は、快感を通りこしてもはや苦痛だ。
逃れようと腰をひねったが、光晴は放すまいとがっちり太ももにしがみついている。
「ちょっとやめて……強すぎて苦しい……」
「この程度でもう降参か?」
光晴が勝ちほこったように言った。
「この前のお返しだ。たっぷりかわいがってやる」
「馬鹿っ、なに考えてるのよっ」
希は呆れて声を上げたが、必要以上には抵抗しなかった。
たまにはこんなシチュエーションもいい。
光晴を傷つけないように加減しながら、手足をばたつかせてもがいてみせる。
興奮した光晴が、舌でクリトリスをいじりながら、膣口に指を入れてきた。
節のある指でかきまわされると、ときどき意外な場所を刺激され、噴きあげるような快感にいてもたってもいられなくなる。
「あっ……あ、はう……っ!」
クリトリスに歯を立てられ、暴力的な快感に背中がそりかえる。
クリトリスの鋭い快感と、内側からこみあげる緩慢な快感とが絡みあい、大きなうねりとなって全身を駆けめぐった。
◆「カレイドスコープ」より
親友の真里亜が失踪した。手がかりは「ミサ」と呼ばれる男とクラブ「イフリート」。触れたものの過去を見ることができる依子は、単身「イフリート」を訪ねるが――。
【抜粋】
真里亜は、華やかな外見にふさわしく、性格も奔放で遊び人だった。とくに異性関係は派手で、ナンパしてきたサラリーマンと寝ただの小遣いをもらっただの、学校でも公言してはばかることがなかった。
対する依子は、ルックスはまずくないが、奇妙な能力を隠しておきたいという気持ちから、万事に控えめで、どこにいてもあまり目立たない存在だった。
正反対ともいえるふたりが親しくなったのは、互いの中に同じ孤独な魂を感じとったためかもしれない。
真里亜は、自分の外見に惑わされず、心から自分を愛してくれる王子さまを求めていた。
「それじゃ、やっぱりまだ何も連絡はないんですか」
「ええ、警察にも捜索願を出したんだけど、こうしているあいだにも、あの子の身に何かあったらと思うと……」
真里亜が失踪して四日目、依子は、真里亜の母親に請われて彼女の自宅を訪問した。
「あの子といちばん仲がいいのは、依子ちゃん、あなたでしょ。何か気がついたことがあったら教えてちょうだい」
そう言われて入った真里亜の部屋は、以前訪れたときとほとんど変わっていないように見えた。
そこそこ片づいているが、読みかけの本が机の上に伏せてあったりして、真里亜がすぐにでも戻ってきそうな雰囲気を漂わせている。
長期旅行や、最悪、自殺などを考えていたとすれば、もう少し徹底して片づけをしていきそうなものだ。
依子は部屋の中を見回しながら、なにげなく机の上に手を置いた。
――背の高い男の後姿。真里亜が彼に向かって呼びかける。「ミサ!」――
一瞬の、だが強烈な幻だった。
机に置いた手のひらに、硬い感触があった。手をどけると、安物のライターが現れた。側面に、店名らしい《イフリート》というロゴと、電話番号が刷りこまれている。
依子は、真里亜の母親に見とがめられないよう、ポケットにそっとそのライターを忍ばせた。
【Hシーン抜粋】
ブラウスの前をはだけられ、脇腹を直接指でなぞられると、くすぐったさとも気持ちよさともつかない感覚に、体がびくびく震えた。
ミニスカートの下に手が潜りこんできて、下着ごしに股間をまさぐられた。
思わず足を閉じて体を硬くすると、なだめるように太ももを撫でられ、内ももに手をかけてふたたび割りひらかれてしまう。
「いや……恥ずかしい……」
抗議する口を、唇でふさがれる。
開いた足のあいだに、操の腰が割りこんできて、思うように動けなくなった。
下着の上から、恥骨のあたりを撫でられ、クリトリスをつつかれる。
びくっとして、両足で操の腰を締めつけた。
操の指が動くたびに、ぞくぞくして体が熱くなる。クリトリスが熱を帯びて脈打ち、心臓の鼓動とひとつになって、頭に響いてくる。
じわりと潤ったところを、いじわるな指でなぞられた。下着が濡れるのがわかり、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
布ごしに割れ目を開かれ、ゆっくりもまれると、濡れた布地がくちゃくちゃと卑猥な音を立てた。
「いや……いや……」
快感と恥ずかしさで、半泣きになりながら首を振る。
「君って、いじめたくなるタイプだよな。そんな顔をされると、もっとひどいことをしてみたくなる」
操に言われ、依子はびくっと体を硬直させた。
「ウソだよ、ウソ。そんなことしない。うんとやさしくしてあげる」
操は、あやすように依子のまぶたにキスを落とすと、体をずらして巧みに依子の下着をはぎとった。
【抜粋】
操は依子にぞっこんのように見えた。依子を見つけただけで、端整な顔をうれしそうにくしゃっと崩す。依子より年上なのに、ふたりだけのときは子どものように甘えてくる。
親しくなると、操は自分のことをよくしゃべった。昼間は電気工事の仕事をしていること。ひとり暮らしで、父親と妹が田舎にいること。母親は数年前に事故死していること。これまでに二人の女の子とつきあい、どちらとも、自分が振られるかたちで別れたこと。
操は天真爛漫で、いっしょにいると気持ちがなごんだ。依子は、自分が操に急速に惹かれていくのを感じていた。
本当に、この操が、真里亜をあんな目にあわせたのだろうか?
だが、自分が見た過去の幻覚は、わかっているかぎり、これまではずれたことがない。じつは操は、無邪気な仮面の下に、凶悪な殺戮者の素顔を隠しているのかもしれない。
操の内ももには、小さな丸いケロイド状の傷跡がいくつもあった。
「煙草の跡」
尋ねると、操は苦笑を浮かべて答えた。
「おフクロにやられたのさ。俺ってば、幼児虐待されてたわけ」
操と抱きあいながら、依子は何度も彼の過去を幻視した。だがそれらは、いずれも他愛のないもので、真里亜に関係するものは何もなかった。
「依子はさ、俺が真里亜の失踪に関わってると思ってるんだろ?」
依子の心を見透かしたように、操が言った。
「誓って、俺じゃないよ。って、口で言うだけじゃ信じてくれないだろうからさ、俺、協力するよ。ふたりで真里亜を探そう」
その言葉に、嘘があるとは思えない。
依子の心は揺れた。
彼を信じたい。だが、あの恐ろしい幻覚を見なかったことにはできない。
◆「淫魔降臨」より
交通事故で致命傷を負った昌美は、淫魔と融合することによって奇跡的に回復する。だがそれ以来、フェロモン垂れながしの淫乱な体になってしまい――。
【抜粋】
四六時中、体がうずいてたまらない。とくに、夜になると耐えがたく、何度か自分で慰めないと、満足に睡眠をとることもできない。
以前はもっと淡白なほうだった。せいぜい一、二週間に一回。それも、友人とHな話をしたり、Hな本を読んだりして、とくに興奮したときぐらいだ。
それが今では、こうして一度達したあとも、すぐに体がほてってきて、第二ラウンドになだれこみたくなるぐらいなのだ。
そう思ったとたん、ぞくりと股間がうずき、またしても無意識に手を伸ばしてしまった。
「もういや! こんなフシダラな体じゃ、お嫁に行けない!」
『そう気にするな』
不意に声が響き、昌美はぎょっとして跳ねおきた。
「だっ、だれっ?」
きょろきょろ見回すが、狭い自室の中にはだれもいない。
『声を出さなくても聞こえる』
また声が響いた。頭の中に直接伝わってくるような声だ。
――ま、まさか……。
『そう、私はおまえの中にいるのだ』
――ウソっ! なんで? あなた、だれ?
『私は……そう、淫魔とでもいえばいいか。人の快感を食して生きる者だ』
――インマ?
『おまえが事故で死にかけたとき、たまたま近くにいてとりこまれてしまったのだ。今後ともよろしく』
――とりこまれた? よろしくって?
『おまえは、本当は死ぬところを、私と融合したことで助かったのだ。これからは我々は一心同体。おまえの感じる快感で私はエネルギーを得て、お返しにおまえを生かしつづける。なに、少々淫乱にはなるが、生きていくのに支障はない』
――ウ、ウソ……そんな……こんなことって……。
『残念かもしれないが、現実だ』
昌美は呆然として布団を見つめた。
――淫魔? 融合? 本当は死んでた?
信じがたいことばかりで、頭が回らない。
ただ一つ、現実感を持って重くのしかかってきたのは、自分が淫乱になってしまったという事実だった。
【Hシーン抜粋】
部屋に入ると、昌美がリードをとった。
いっしょにシャワーを浴びながら、さっそく愛撫を開始する。ボディーシャンプーを泡立て、要所要所をやさしくこすりたてると、青年の股間はたちまちそそりたって、持ち主の息を荒くさせた。
たくましい腕で抱きよせられ、壁に背を押しつけられて、片足を高く持ちあげられる。
ホテルに入ると同時に性欲を解放されていたせいで、昌美にはもうためらいはない。体のうずきを鎮めようと、積極的に青年を受けいれる。
容赦なく突きいれられて、めまいがした。
だが、とっくに自分の蜜で潤っていたせいで、痛みはない。抜き差しされ、かきまわされると、しびれるような快感が脳天まで突きあげた。
青年の射出とほとんど同時に、一度目の絶頂を迎える。
余韻に浸るのもつかのま、すぐに飢餓感にさいなまれて、こんどはベッドへ。
青年のものが復活するまで、彼の全身を丁寧に愛撫する。耳の中を舐め、耳たぶを噛み、顎から首すじに舌を這わせると、青年は恍惚とした表情で体の力を抜いた。
肩から指先まで撫でおろしながら、広い胸についばむようなキスを落とす。小さな乳首を舐め、軽く歯を立てる。
またいだ股間の下、青年の分身がもぞりと動いた。
青年の手が伸びて、両方の乳房を包まれた。乳房をもまれながら、親指と人さし指で乳首をつままれ、くりくりとこねられる。強く挟まれるたびに電流のようなしびれが走り、股間が熱く濡れた。
すっかり立ちあがった青年のものが、入口付近にあたってぬるぬるすべりだす。
我慢できなくなって、昌美は、その熟れた肉棒を片手で支え、自分の入口にあてがった。
息を吐きながら、ゆっくりその上に腰を落とす。
先端が入り、続いて幹の部分が入ってくる、えもいわれぬ快感。入口が押しひろげられ、内壁がこすられて、背すじがぞくぞくする。
もっと欲しい。
【Hシーン抜粋】
島谷の腕が伸びてきて、強引に抱きよせられた。壁に背中を押しつけられ、乳房を荒っぽいやりかたでもまれる。
じんとしびれたところから、快感がさざなみのように広がった。
ごつごつした指で顎をとらえられ、唇を重ねられる。
うまい……!
唇を舐められ、軽く吸われただけで、昌美はうっとりして力が抜けてしまった。歯と歯茎の上をまんべんなくなぞられ、歯の裏側も舌先で探られる。
上顎をつついたり撫でたりされると、くすぐったい心地よさでいっぱいになり、抵抗する気もなくなってしまう。
舌をからめとられ、強く吸われて、島谷の口の中まで引きこまれた。先端から付け根のほうまで、ほぐすように歯を立てられ、付け根を挟まれたまま、舌でねっとりともてあそばれた。
押しよせる快感の波で、膝ががくがく震えだす。
完全に島谷のペースだった。
しょせん、力では大きな男にかなわない。もがく両手を片手でたやすく封じられ、昌美は島谷のするがままになるしかなかった。
幸いなのは、快感を覚えるほど、体内の淫魔に力がみなぎることだった。やがて諸刃の剣となる現象だが、今の昌美には心強い。
「うっ……ふうぅ」
両手首をひとまとめにして壁に縫いとめられた姿勢のまま、執拗に口と胸を責められた。
口腔内を穏やかに舌でかきまわされているところへ、ふいに乳首をぎりっとつねられる。あるいは、胸をゆったりもまれながら、いきなり息もできないほど激しく口を吸われる。
メリハリのつけかたが、憎らしいほど絶妙だった。
体の最奥に火がともり、徐々に大きくなって下腹部を焦がしはじめる。
あっけなく昌美の股間はとろけきり、とめどなく熱い蜜を滴らせた。
◆「リセット迷宮」より
新入社員の尾上には、時間を巻き戻す不思議な力があった。その力に助けられた真紀は、尾上とつきあうようになるが、やがて真紀自身も――。
【抜粋】
「あっ!」
何かを踏んだと思った瞬間、体が傾き、階段の下の踊り場が目の前に迫っていた。
――落ちる!
近藤真紀は、予想される衝撃と痛み――もしかしたら死ぬかも?――を覚悟して、ぎゅっと目をつぶった。
だが何も起こらなかった。
しばらくして、自分の体がまっすぐ立っており、両足もしっかり地についていることがわかって、恐るおそる目を開けてみる。
「――ええっ!?」
真紀は目を疑った。
立っていたのは、いま落ちたと思った階段の上だった。
――えっ? 何? どういうこと? いま私、落ちなかった???
焦ってあたりを見回すと、すぐそばに見覚えのある男性社員が立っていることに気づいた。
今年の新入社員だ。名前はたしか、尾上佑一。眼鏡のインテリタイプで、顔かたちは悪くないが、どうも根暗な印象がある。そのため女性社員の間ではとくに話題にもならず、真紀も、彼がどの部署に配属されたかも知らないぐらいだった。
「すみません」
尾上がぼそっと言ったが、真紀はなんのことかわからず、きょとんとした。
「ペンを」
言いながら尾上は身をかがめ、真紀の足元に落ちていたボールペンを拾いあげた。
「え? あ、それ……」
――私がさっき踏んだのって、それじゃ……?
そう言いかけた真紀は、混乱して口を閉じた。
――でも、現実には落ちてないし、ボールペンはここにあったし……なんなの? さっきのは……夢?
それにしては、踏んだ感触も生々しかったし、バランスを崩したとき一気に噴き出した、あの恐怖感も忘れられない。
――えーと、えーと……やけにはっきりしてたけど、虫の知らせとか、予知能力とか、そういうものだったとか?
真紀が必死でいまの出来事に説明をつけようとしている間に、気づくと尾上の姿は消えていた。
【Hシーン抜粋】
心地よい重みと温もり。着やせするたちらしく、ひょろりとして見えた体は、裸になると案外たくましい。眼鏡をはずした顔は、インテリっぽい堅さがなくなり、年相応の若々しい輝きを放つ。
「ん……」
両手で包むように胸を撫でられて、真紀はうっとりと目を閉じた。
硬くなった乳首に指があたり、痺れるような疼きが走る。触れるか触れないかのキスを落とされ、くすぐったさの混じった快感に、思わず身震いしてしまう。
尾上の愛撫は、彼の性格を物語るように、一つひとつが丁寧で繊細だった。穏やかなその動きに身をゆだねているうちに、真紀の体はじわじわと熱を帯び、いつのまにか熱く燃えあがる。
「あっ……んっ……」
重なった体がこすれあうだけで、ざわざわと妖しい快さが広がった。無意識に腰を揺らすと、尾上の息遣いが荒くなり、胸元に噛みつくようなキスをされた。
「っ!」
痛いほど強く吸われたそこを、舌で舐められ、唾液の蒸発するひんやりした感覚に肌が粟立つ。
キスをくりかえしながら、尾上の顔が少しずつ下がっていき、下腹部に到達する。
「――あっ……」
恥骨の下の最も敏感な部分に触れられた瞬間、ぞくっとして力が抜けた。
いままでとは違う、鮮明な快感が蔦のように這いのぼり、頭がぼうっとなって、全身がどくどくと脈打ちはじめる。
広げた舌でぞろりと舐めあげられ、衝撃に腰がびくんと跳ねた。中心がずきずきと疼き、電流のような痺れが断続的に駆けぬけた。
「はっ……あっ……待って……!」
思わず伸ばした手を押さえられ、さらに舌で刺激される。
【抜粋】
最初の異変は、金曜日、終業時間の直後に起こった。
尾上とのデートを控え、急いで帰り支度をすませ、さあ部屋を出ようというところへ、課長がいきなり残業の打診をしてきたのだ。
「ああ、近藤くん。すまないが、この書類の修正を頼めないかね? 南くんの仕事だったんだが、あいにくもう退社してしまったらしくて――」
――ああもう、なんてついてないの! あと一分早く部屋を出ていれば!
そう思って、真紀が内心じだんだを踏んだ瞬間。
ふと壁にかかった時計を見ると、終業時間の五分前だ。
――えっ?
気がつけば、自分はまだデスクの前で、総務課の面々もそれぞれの業務に集中している。
――《リセット》?
尾上のしわざだと思ったが、見回しても彼の姿はない。
――それより、いまのうちに早く準備を!
真紀はこっそり片づけを始めると、終業のチャイムとほとんど同時に部屋を飛び出した。
だが、落ちあった尾上にきいてみると、尾上は何も知らないと言った。
「僕は五分ほど仕事が押してしまって、慌てて出てきたんだけど」
「じゃあ、あれはなんだったの? てっきり《リセット》だと思ったんだけど――」
二人は腑に落ちない顔を互いに見合わせた。
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